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日本を代表し象徴する秀麗な活火山富士山は、第37回ユネスコ世界遺産委員会において、「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」の名称のもと世界文化遺産に登録されました。未来に受け継ぐべき世界の宝として認められた富士山の価値を紹介します。
日本一の高さ(標高3,776メートル)を持つ活火山、富士山。
2013年6月、第37回世界遺産委員会において、「富士山-信仰の対象と芸術の源泉-」の名称のもと世界文化遺産に登録されました。その背景には、 富士山が『信仰の対象』であるとともに、『芸術の源泉』として、日本人の 自然観や日本文化に大きな影響を与えてきた歴史があります。 かっては噴火を繰り返す山として畏れられていた富士山は、富士講と呼ばれる信仰集団や浮世絵の登場などにより、日本人にとって身近な存在となりました。人と自然が信仰と芸術を通して共生する姿は、富士山が持つ大きな特徴と言えるでしょう。そうした歴史・文化にゆかりのある25カ所から成る富士山を、ユネスコ世界遺産委員会は未来に受け継ぐべき世界の宝として認めたのです。
葛飾北斎「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」(山梨県立博物館蔵)
絹本著色富士曼荼羅図
(富士山本宮浅間大社蔵)
日本一高くそびえる富士山は日本人にとって神聖な存在です。古くから『信仰の対象』として、日本人の自然観に大きな影響を与えてきました。古来、火山活動を繰り返す富士山は、山麓から山頂を仰ぎ見て崇拝する「遥拝」の対象となってきました。やがて噴火が鎮まると、日本古来の山岳信仰と外来の仏教が習合した「修験道」の道場として、多くの修行者(修験者)が山頂への「登拝」を行う場所となります。さらに時代が進むと、道者と呼ばれる一般の人々が、修験者に導かれて山頂を目指すようになりました。そして、17世紀以降は「富士講」と呼ばれる富士山信仰が隆盛します。数多くの富士講信者が登拝するとともに、山麓の霊地を巡る「巡拝」を行うようになり、登山者を支援する御師住宅など施設の整備も進みました。現在も夏の登山時期になると、御来光を拝んだり、噴火口周囲を一周するお鉢巡りなどをしたりするために、山頂を目指す人々で賑わっています。
横山大観「群青富士」
(静岡県立美術館蔵)
葛飾北斎「冨嶽三十六景 凱風快晴」
(山梨県立博物館蔵)
雄大さと美しさを兼ね備える富士山は、『芸術の源泉』として、日本人のみならず海外の芸術家にもインスピレーションを与えてきました。絵画、文学、詩歌、演劇の題材となり、数多くの芸術作品を生み出しました。 古くは8世紀に編まれた日本最古の和歌集「万葉集」にも富士山を詠んだ和歌が見られ、「竹取物語」「伊勢物語」などの古典作品、俳句や漢詩にも題材として取り上げられてきました。平安時代以降は絵画の世界にも登場しはじめ、江戸時代には葛飾北斎の「冨獄三十六景」や歌川広重の「東海道五拾三次」などの富士山を描いた浮世絵が人気になります。それらは海外にも輸出され、ゴッホやモネなどの西洋芸術家に衝撃を与えました。近代では、横山大観の「群青富士」で扉風絵として描かれたり、夏目激石や太宰治の文学作品の題材となるなど、富士山の『芸術の源泉』としての価値は今もなお薄れることはありません。
古来より数多くの信仰と芸術を生み出した富士山。その山体だけでなく、周囲にある神社や登山道、風穴、溶岩樹型、湖沼など25の構成資産から成ります。世界文化遺産としてふさわしい価値を有している富士山の構成資産/構成要素について紹介します。